第1話 「克己復礼」

驚くほどボールが遠くに飛んで行った。この日、この瞬間。私は自分の人生で初めて、ゴルフは面白いと感じたのである。

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ゴルフをするきっかけとはなんだろうか。それは皆それぞれいろいろだと思うのだが、私の場合は、ちょっと普通とは違う(と思っている)。2年前、ある事情で仕事を辞めてしまった。その後、新しい仕事を始めようと思い、その勉強のためにひたすら本を読みまくった。

気が付いたら、視力の低下とともに、半年が経過していた。そんな浦島太郎でもないだろうに気が付いたら半年が経過していたなんて、言い過ぎだと思うかもし れないが、体重が落ちるほど、勉強したのは、学生だったころ以来である。そして半年後、気がついたことは体力が落ちまくっていたということ。歩くのが精 いっぱいだったのである。肌の色は日本に居る時よりも白くなっていた。こんな暑いところなのに、一歩も外出しなかったからである。

まだ40代でこの体力の無さはなんなんだと自問自答しているとき、たまたま家の近くに新しいゴルフ練習場兼ゴルフコースが誕生した。な んとなく、新しいことを始めたかったということ、それからたまには外出するのもいいかなと思ったこと、そして運動しなきゃ、歩けなくなるかもと不安を感じ たこと。

それで思い切って、プーナカというゴルフ場に行ってみた。そこにはオリバーというイギリス人がティーチングプロとしてゴルフを教えてい た。最初の10時間はこのオリバーに基礎を教わり、それから自己練習をしていたが、昨年の6月頃から日本人プロの馬場さんに教えてもらうことになった。

ゴルフをやっている人でゴルフを好きな人がどれくらいいるのかは分からない。それはゴルフをやっている人はみんなゴルフが好きでしょう と思うだろうが、私はそうは思っていない。きっとサラリーマンの人たちなんかは付き合いでゴルフをやらされている人たちも少なからずいるのではないだろう か。

私がオリバーに教わった後、正直、ゴルフの楽しみがあんまりわからなかった。友達と一緒に下手ながらもコースに回り、ビールを飲みながら、炎天下のプーケットでゴルフをすればそれはそれで楽しい。しかし、ゴルフ自体の楽しみかどうかは別物だと思う。

馬場さんに教わった時、私は確かにそれを感じた。 教わってから、3か月くらい経ったある日の夜。練習にでかけてボールを打ってみたら、軽く打ったにも関わらず驚くほどボールが遠くに飛んで行った。この日、この瞬間。私は自分の人生で初めて、ゴルフは面白いと感じたのである。 なんだ結構、ゴルフって面白いし、簡単じゃないかと思ったのがきっとゴルフの神様のいたずら。次の日から練習に行ってみても、二度とそのスイングをすることができなかった。

 そして、昨年の12月頃からもう一度びっちり練習しようと思い立ち、馬場さんに徹底的に教えてもらうことになった。 そう、あの日の感触を取り戻すために。

「球を打っても 球を打っても 我がゴルフ上手くならず じっと手を見る」 とまるで石川啄木のように豆だらけになった手を見るわけだが、見ていても何も始まらない。己に克つという精神でゴルフに臨みたいと思う今日この頃である。  (2011年2月号からプーケットウォーク・メールマガジンで連載スタート)